昭和53年の開創から、30年目を迎えようとしている。霊場は松山城を中心として方位に干支を配し、ご参拝のみなさまが、それぞれの寺院とご縁を深めて戴けるようにしております。
バス・自家用車であれば1日で巡拝可能。観光バスでの参拝も進み、各霊場も立派になりました。家族がスキンシップを兼ねて参拝する。幼子が両親に真似て小さな手を合わせる仕草は微笑ましい。この家族に幸せあれと応援したくなる。殺伐とした時代だからこそ祈りを深めねばならない。お薬師さまも決してお忘れにはならない。
もちろん、祈り・願いは様々だ。添え護摩木に願いを託し、絵馬に書き御守護を求め、特別祈祷を願い出る方も多い。毎春四国霊場巡拝に出掛ける方々が、いつとなく道中の無事安全を願って十二薬師の参拝をするのも恒例となった。
私たちが病気になっても、これまた、大自然の理であるから、お薬師さまを通じて、自然界の治癒力を賜るようひたすら祈らねばならない。長い歳月、和尚さんまた来たよ。参拝の方々に声をかけられる。ああ いらっしゃいが、お帰りなさいと云ってしまいそうなそんな親しい間柄。お顔はよく存じ上げていても、お名前住所の分からないことが多い。それでいいのだと思う。
ある老僧が云っておられた。空には広さがある海には深さがある。信仰は素朴が一番だと。参拝者は各霊場のお薬師さまに逢いたくなるから歩を運ぶ。寺を護る者にとって、来てよかったと思われたらこれが勲章。
今は亡き両親も、一年を通じ参拝のみなさまにお接待出来るのが楽しみだった。健康に恵まれ長命を保てたのは、振り返ってみると、お薬師さまの庇護に加え、参拝のみなさまによって、生かされ続けた日々だったと思えてならない。
医座寺住職 熊澤芳裕 合掌
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